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尖ったデザインって何だろう?
現役デザイナーが考えてみた

尖ったデザインって何だろう? 現役デザイナーが考えてみた

何年か前に参加させていただいた異業種交流会で「マルキンさんって尖ったデザインを作る会社ですよね」と言われたことがありました。ウチの会社も認知されているんだな、と思いつつも「尖った」という表現に何となく違和感を覚えたことを記憶しています。
なぜ違和感を覚えたのか?恐らく自分自身が「尖ったデザイン」を目指してデザインをしたことがないからだと思います。

「尖ったデザイン」とは、どんなものをイメージしているのか?「尖った」という言葉から改めて考えてみると
●他のデザインと比べて突出した印象がある
●個性的である
●特定の方向に振り切っている
●他者と違っている
こんな感じでしょうか。簡単に言ってしまえば「個性的」と言うことになります。また、単に洗練された美しいデザインに対して「尖った」と表現される方もいるように感じられます。デザイナー同士の会話で「尖ったデザイン」という言葉が出てきた場合は、個性的かつギリギリのバランスでデザインされたもの、という意味合いで使われることもあり、その言葉に含めている意味は人や状況によって一様ではないようです。

「尖ったデザイン」を目指していない、とは?

お客様からも時折「尖ったデザインにしたい」というご要望があります。私が手がけるデザイン分野はWebサイトがメインで、BtoB企業の案件を多く担当しています。BtoC案件も担当することはありますが、ターゲットを考えれば、ある程度万人に受け入れられるデザインが必要という結論になることが多く、あまりにも個性的過ぎるデザインは、ユーザーに広く受け入れられない可能性もありリスキーです。恐らく社内の他のデザイナーも私と近しい考えでデザインを手がけることが多いと思われます。

何故「尖ったデザイン」を作る会社と認知されたのか?

何故「尖ったデザイン」を作る会社と認知されたのか?私自身Webサイトをデザインする際に意識するのは、お客様企業の強みや文化、ポリシー、ロゴマークのビジュアルなど、企業の個性にフォーカスして、個性をどのように際立たせてビジュアルに落とし込むかという部分です。企業の個性を言葉とともにビジュアルで表現することで、より強い企業メッセージとなって想定ターゲットに伝えることができます。詳細な説明文を読まなくとも、雰囲気でどんな企業か伝わるようにすることがデザインの役割の1つだと考えています。
「企業の個性が際立っている」と言う意味で「尖ったデザイン」と評されたのであれば、それはデザイナーとして嬉しい評価ですね。と、ポジティブに解釈することにしました。

陥りがちなデザイン上の間違い

お客様からのご要望での「尖ったデザイン」というと、他者とは違った、変わった目立つデザインという意味で使われていることが多いように感じられます。こう言った要望があった際に、デザイン面で陥りがちな間違いがあります。それは尖ったデザインにすることが目的化して、企業の担当者の好みや、デザイナーの個性を全面に押し出した、独りよがりなデザインになってしまうことです。デザインにはビジネス上の目的があります。認知度向上、売り上げアップ、ターゲットの拡大など、目的を達成する上でどのようなデザインが必要か検討が行われます。その結果、企業や商品の個性を通常よりも更に際立たせ、ユーザーに強烈なインパクトを与える必要があると判断されれば、その際はいわゆる「尖ったデザイン」が必要という判断になるかもしれません。しかし、恐らく何においてもそうですが、個性的すぎるものは批判の対象になる可能性があります。「尖ったデザイン」に大きく寄せる場合は、リスクも考えて実行する必要があります。

「尖っている」と評価されるデザインとは(いい意味で)

「尖っている」と評価されるデザインとはデザイン対象となる企業や商品等の、どの部分にフォーカスするか?と言う点が重要だと考えます。その商品等に今まで見出されていなかった新しい価値にフォーカスし、ビジュアル面でその方向に思いっきり振り切る。ビジュアルの表現手法も非常に重要な点で、その価値に最適化された表現が必要です。更には不要な要素を極限まで削ぎ落としシンプルな表現にすることで、伝えるべき本質的な部分が露わになり、強いインパクトとともにメッセージが伝わりやすいデザインになるのだと思います。今まで見出されていなかった意外な価値を磨き上げ露わにすることで、個性が際立ち「尖ったデザイン」が生まれるのではないでしょうか。

私が感じた「尖っている」デザイン

ブラックサンダー「一目で義理とわかるチョコ」

一目で義理とわかるチョコ

もう何年も前の話になりますが「コンセプトが尖ってるな〜」と感じた広告がありました。チョコレート菓子、ブラックサンダーのバレンタイン商戦の広告「一目で義理とわかるチョコ」です。どちらかと言えばバレンタインのプレゼントには不向きな商品だと思いますが、マイナスイメージを逆手に取った広告で、私の中で強烈に印象に残っています。ビジュアル的には至ってシンプル(普通な感じ)でしたが、商品の新しい価値にフォーカスした点と、それをうまく表現したキャッチコピーが、私の中で強烈な印象を残した要因ではないかと思います。
https://bit.ly/31XbIWf


GUCCI #24HourAce WEBサイト

GUCCI #24HourAce

GUCCIが「Aceスニーカー」をフィーチャーしたビデオプロジェクト“#24HourAce”のWEBサイト。尖ったデザインが多いGUCCIのWEBサイトとしては全く違和感がなく、まさにブランドを表現したデザインだと感じます。奇抜な配色や動きを採用した、かなり攻めたデザインだと思います。
https://24hourace.gucci.com


Made in ピエール・エルメ 丸の内

ピエール・エルメ

世界的に著名なフランス人パティシエ「ピエール・エルメ」が選りすぐった日本の素晴らしいものを、東京丸の内から世界へ発信するコンセプトショップ。そこで使用されている縦書きカタカナ表記で配置された「ピエール・エルメ」の文字。パケージやTシャツ、トートバッグなど、店内の様々なものに展開されており、何とも絶妙なバランスでデザインされています。私がデザイン担当だとしたら、これを採用するのはかなり勇気がいるなと思いました。
https://www.pierreherme.co.jp/ph/
https://trilltrill.jp/articles/1079838

まとめ

私の「尖ったデザイン」に対する考えや、「尖っている」と感じたデザインを紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。今まで感覚的になんとなく使ってきた「尖ったデザイン」という言葉について、自分なりに思考する事で、この言葉に対する認識が深まったように感じます。おそらく「尖ったデザイン」の定義が曖昧で、人によって捉え方に幅があるため、この言葉に対する考え方や感じ方は様々ではないかと思います。私が紹介した「尖ったデザイン」3件も狙ったわけではなく、全くタイプの違うものになったのは、私にとってちょっとした発見でした。「尖ったデザイン」とは単に見た目の奇抜さだけに感じるものではないのだなと。
しかし全くタイプの違う3つのデザインですが、私にとって共通して言えるのは「見ているだけで気持ちが上がる」という点です。見た目のデザインの背景にある個性や価値を、通常とはちょっと違う方向から究極に磨き上げたものに対して、「尖っている」と私は感じているのかもしれないです。

WEBデザイナー / I.H